■“北方”の歴史Ⅳ、エルフの出ネザリル記:
この時代、人間やオークにとっては略奪するのに十分なエルフの拠点が残されていた。エルフ達が“北方”を離れエヴァーミートへ行く決心をした時には、街にはエルフの跡形は殆どなく、ただ“古道”やハイフォレストにあるエイアランの渡し場にある破壊された港のような場所だけしか残っていなかった。長い間住んでいた地を離れたのはなにもエルフだけではなかった。ネザリルの人間による国家もその歴史の終わりにいた。
ネザリルの破滅は砂漠という形でやってきた。砂漠は“狭海”を飲み込んでいき、海を乾いた塵と吹き荒れる砂で一杯にした。伝説にはネザリルの偉大なウィザード達が自分達の土地を失うことを悟り、ネザリルの地と同胞を捨て、魔術の秘儀を携えて世界の隅々に散って行ったと言われている。実際には移住はとてもゆっくりと行われ、3,000年前に始まった移住は1,500年前にやっと終わったのだ。
真実がどうであろうと、ネザリルの地にウィザードはもういない。“北方”においては、かつて勢力を誇っていたデルザウン王国にあるドワーフ達の要塞が苦難の時を迎えていた。オーク達が襲撃してきたのである。オークはいつの時代も“北方”において敵とみなされていた。通常のねぐらでは増えすぎた人口を養いきれなくなると、数十世代分のオーク達が巣穴から外へと次々に押し寄せるのだ。この時はスパイン・オブ・ザ・ワールド山脈にある洞窟から飛び出し、”灰色山脈”にある廃鉱からは吐き出され、”氷山脈”のドワーフが使っていた穴ぐらより叫び声を上げ、ネザー山脈の地下聖堂の外へと暴れ回り、ハイムーン山脈の中心部からあふれ出てきた。そのような数のオーク達が出現したことは未だかつてなかった。デルザウン王国はこの猛威を前にした内部崩壊によって滅びた。ウィザードの居ないネザリルはその姿を歴史から消していた。エイアラン王国のエルフ達だけはターラング率いるトレント達や名も無き味方達と共に猛威に立ち向かい、自らの故郷が滅亡する日を数百年以上は先に辛うじて食い止めることができたのだ。
東ではエイアラン王国がアスカルホーン要塞を建て、ネザリル帝国からの避難民がハイフォレストにカースの町を造ると、彼らに要塞を引き渡した。ネザリルからの避難民達はロークとラウドウォーターの町の基礎を築いた。他の難民達は、山や丘、北の湿原やハイフォレストの西をさまよい、ウスガート・バーバリアンの祖先になったり、シルヴァリームーンやエヴァーランド、サンダバーといった町の建立者となったのだった。